1.古文の語句 161〜240
161.
ども
162.けれども。
【語呂合わせ】どーもと挨拶した。けれども返事はない。ただの屍のようだ。
「親のあはすれども、聞かでなむありける」
【訳】(女は)親が(他の男と)結婚させようとするけれども、承知しないでいたのだった。
【出典】伊勢物語 二三
なかなか
163.かえって。むしろ。
【語呂合わせ】なかなかかえってこない。
「髪の美しげにそがれたる末(すゑ)も、なかなか長きよりもこよなう今めかしきものかな」
【訳】(尼君の)髪がきれいに切り落とされている先端も、かえって長いのよりはこの上なくしゃれているものだな。
【出典】源氏物語 若紫
ながむ
164.@(物思いに沈みながら)ぼんやり見る
A詩歌を吟じる。詠む。
【語呂合わせ】長っ!むっちゃ長っ!そんな長い和歌を詠むの? 物思いに沈んじゃうよ。
@「暮れがたき夏の日ぐらしながむれば」
【訳】なかなか暮れない夏の暑く長い日を、一日中もの思いにふけってぼんやりしている(と、何ということもなくすべてがもの悲しく感じられる)。
【出典】伊勢物語 四五
A「『唐衣(からころも)着つつなれにし』とながめけん三河(みかは)の国八橋(やつはし)にもなりぬれば」
【訳】「唐衣を着なれるようになれ親しんだ」と詠んだという三河の国八橋にも着いたので。
【出典】平家物語 一〇・海道下
なさけなし
165.@興ざめだ。無風流だ。
A思いやりがない。つれない
【語呂合わせ】なさけないぞ!思いやりがないと。
@「好き給(たま)はざらむもなさけなく、さうざうしかるべしかし」
【訳】浮気をなさらないのも興ざめであり、物足りないにちがいないよ。
【出典】源氏物語 夕顔
A「などかなさけなくはもてなすらむ」
【訳】(お前は)どうして(葵(あおい)の上を)つれなく扱うのであろうか。
【出典】源氏物語 紅葉賀
な〜そ
166.〜するな。
【語呂合わせ】なぁ!そういうことするなよ。
「春日野(かすがの)は今日(けふ)はな焼きそ若草のつまもこもれり我もこもれり」
【訳】春日野は、今日だけは焼かないでくれ。この野には私の美しい妻も隠れているし、私も隠れているのだから。
【出典】古今集 春上
など
167.どうして。なぜ。
【語呂合わせ】などなどです。「なぞなぞ」でなく「などなど」なのはなぜでしょうか? …どうして答えがないの?!
「親、子に言はく『など久しくは見えざりつるぞ』」
【訳】父親は子を見て言うには「どうして長いこと来なかったのか」。
【出典】今昔物語集 二五・一二
なにがし
168.どこそこ。だれそれ。
【語呂合わせ】なにが市? どこそこ?! なにが氏? 誰それ?!
「悲田院(ひでんゐん)の尭蓮上人(げうれんしやうにん)は、俗姓は三浦のなにがしとかや、さうなき武者(むしや)なり」
【訳】悲田院の尭蓮上人は、出家前の俗人としての姓は三浦のだれそれとかという、並ぶ者のない武士である。
【出典】徒然草 一四一
なほ
169.@いっそう。
Aやはり。
【語呂合わせ】なおいっそう頑張ろう!
@「かかるうちに、なほ悲しきにたへずして」
【訳】こうした(騒ぎの)中で、さらにいっそう悲しさにこらえきれないで。
【出典】土佐日記 二・一六
A「されど、なほ夕顔といふ名ばかりはをかし」
【訳】しかし、何といってもやはり夕顔という名前だけは興味深い。
【出典】枕草子 草の花は
なり
170.@〜だ。〜である(断定)
A〜にある。〜にいる。(存在)
【語呂合わせ】成田空港はどこにある? 千葉だ。
@「おのが身はこの国の人にもあらず。月の都の人なり」
【訳】私の身はこの人間世界の人ではない。月の都の者である。
【出典】竹取物語 かぐや姫の昇天
A「壺(つぼ)なる御薬奉れ」
【訳】壺(の中)にあるお薬を召し上がれ。
【出典】竹取物語 かぐや姫の昇天
なんぢ
171.おまえ。(通常、対等・目下の人に使う)
【語呂合わせ】何時におまえは来るの?
「いかにぞや、なんぢ父に憎まれたるか、母にうとまれたるか」
【訳】どうしたことか、おまえは父親に憎まれたのか、母親にうとんじられたのか。
【出典】野ざらし 俳文・芭蕉
な(ん)でふ
172.どうして(〜か、いやない)。(反語)
【語呂合わせ】なんで太った?!どうしてこんなに太ったのだろうか、いや太ってない。
「ただ清き衣(きぬ)を着て詣(まう)でむに、なでふ事かあらむ」
【訳】ただもうきれいな衣服を着て参詣(さんけい)しようというのに、どうして支障があろうか、いや、支障はない。
【出典】枕草子 あはれなるもの
にほふ
173.きわだって美しい
【語呂合わせ】におうんだけど、きわだって美しいんだよね。あの人は。でもにおうんだよね。
「紫草(むらさき)のにほへる妹(いも)を憎くあらば人妻ゆゑに我恋ひめやも」
【訳】紫草のように美しいあなたをいやに思うならば、(あなたは)人妻なのだから、どうして私が恋い慕うことがあるだろうか、決してそんなことはないよ。
【出典】万葉集 二一
ぬ
174.@〜た。(完了)
Aきっと〜だろう
B(「〜ぬ〜ぬ」のかたちで)〜たり〜たり
※ぬ+体言の場合、意味(用法)は打ち消しなので注意。
【語呂合わせ】ぬけた!ぬけたりぬけおちたり…。きっと将来はハゲるだろう。
「秋来きぬと目にはさやかに見えねども風の音にぞ驚かれぬる」
【訳】秋が来たと目にははっきり見えないけれども、風の音に秋の訪れをはっと気づかされたよ。
【出典】古今集 秋上
ねんごろなり
175.親切だ。入念だ。
【語呂合わせ】寝る頃になり絵本を読んでくれた。お母さんは親切である。
「朝(あした)には夕(ゆふべ)あらんことを思ひて、重ねてねんごろに修(しゆ)せんことを期ごす」
【訳】朝には夜があることを思って、もう一度入念に身につけることの心積もりをする。
【出典】徒然草 九二
ねんず
176.がまんする。
【語呂合わせ】寝ずに我慢する。
「いま一声(ひとこゑ)呼ばれていらへんと、ねんじて寝たるほどに」
【訳】もう一度呼ばれたら返事をしようと、じっとこらえて寝ているうちに。
【出典】宇治拾遺 一・一二
の
177.〜が
※(主語を表す「の」。 父の帰る日→父が帰る日)
【語呂合わせ】主語のあとの「の」は「が」
語呂になってなくて申し訳ないです。
「まいて雁(かり)などの連ねたるが、いと小さく見ゆるは」
【訳】いうまでもなく雁などが連なって(飛んで)いるのが、とても小さく見えるのは。
【出典】枕草子 春はあけぼの
のたまふ
178.おっしゃる。
【語呂合わせ】猫のタマ「ふっ」とおっしゃる。
「さのたまはば、今日は立たじ」
【訳】そんなことをおっしゃるなら、今日は出かけるのをやめよう。
【出典】枕草子 大蔵卿ばかり
ののしる
179.大騒ぎする。
【語呂合わせ】「Know!Know!知るって意味だよ」と大騒ぎする。
「そのかへる年の十月二十五日、大嘗会(だいじやうゑ)の御禊(ごけい)とののしるに」
【訳】そのあくる年の十月二十五日、大嘗会の御禊が催されると大騒ぎするときに。
【出典】更級日記 初瀬
〜のみ
180.〜だけ。
【語呂合わせ】ノミだけやっつける。
「花はさかりに、月はくまなきをのみ見るものかは」
【訳】桜の花は満開のときに、月はかげりがない満月のときにだけ見るものであろうか、いや、そうではない。
【出典】徒然草 一三七
ば
181.@(未然形+「ば」の場合)もし〜ならば。
A(已然形+「ば」の場合)〜ので。〜たところ。
【語呂合わせ】「あんたバカぁ?」ともしアスカに言われたならば、エバンゲリオンなので。
@「世の中にたえて桜のなかりせば春の心はのどけからまし」
【訳】世の中に、まったく桜がなかったとしたら、春のころの人々の心はのんびりした気分であったろうに。
【出典】古今集 春上・在原業平(ありはらのなりひら)
A「京には見えぬ鳥なれば、皆人見知らず」
【訳】 都では見かけない鳥であるので、そこにいる人は皆、よく知らない。
【出典】伊勢物語 九
ばかり
182.@ぐらい。
Aだけ。
【語呂合わせ】バンカーりょうくんぐらいになると一打だけでピンのそばぐらいばっかり。
@「三寸ばかりなる人、いとうつくしうてゐたり」
【訳】(竹の中に)三寸(=約九センチ)ぐらいの人が、とてもかわいらしいようすで座っている。
【出典】竹取物語 かぐや姫の生ひ立ち
A「人々は返し給(たま)ひて、惟光(これみつ)ばかり御供にて」
【訳】人々はお帰しになって、惟光だけをお供にして。
【出典】源氏物語 若紫
はしたなし
183.@中途半端だ。不似合だ
Aきまりが悪い。
【語呂合わせ】走ったけど今のは「無し!」では中途半端できまりが悪い。
@「思ほえず、古里(ふるさと)にいとはしたなくてありければ」
【訳】思いがけなく、(さびれた)旧都にたいそう不似合いに(美しい姉妹が)住んでいたので。
【出典】伊勢物語 一
A「げにいとあはれなりなど聞きながら、涙のつといで来こぬ、いとはしたなし」
【訳】なるほどたいそう哀れなことだと(思って話を)聞いているのに、涙がすぐに出て来ないのは、ほんとうにきまりが悪い。
【出典】枕草子 はしたなきもの
はた
184.@やはり。さらにまた。
Aそれとも。あるいは。そうはいうものの。
【語呂合わせ】ハタハタ寿司はやはり美味しいのか?それとも…。(ハタハタ…深海魚)
@「日入り果てて、風の音(おと)、虫の音ねなど、はた言ふべきにあらず」
【訳】日がすっかり沈んでしまって、(耳に聞こえてくる)風の音や虫の鳴き声など(の趣のあることは)、さらにまた言うまでもない。
【出典】枕草子 春はあけぼの
A「かう読ませ給(たま)ひなどすること、はた、かのもの言ひの内侍(ないし)は、え聞かざるべし」
【訳】こうして(中宮様が私に漢籍を)お読ませになったりしていることまでは、そうはいうものの、あの口うるさい内侍は、まだ聞きつけていないだろう。
【出典】紫式部日記 消息文
はづかし
185.立派だ。(こちらが恥ずかしくなるほど相手が優れている)
【語呂合わせ】(こちらが)恥ずかしくなるほど相手がりっぱだ。
「はづかしき人の、歌の本末(もとすゑ)問ひたるに、ふとおぼえたる、我ながらうれし」
【訳】こちらが気恥ずかしくなるほどりっぱな方が、歌の上の句と下の句をたずねたときに、さっと思い出したのは、我ながらうれしい。
【出典】枕草子 うれしきもの
はな
186.梅の花。桜の花。
【語呂合わせ】花見に来たら桜じゃなくて梅だった。
「はな・紅葉(もみぢ)の思ひもみな忘れて悲しく」
【訳】(春の)桜や(秋の)紅葉(にあこがれた)思いもすっかり忘れて、ただ悲しく。
【出典】更級日記 子忍びの森
はべり
187.@〜です。〜ます。
Aあります。ございます。
【語呂合わせ】母ベリー元気です。ますます元気です。
@「今までとまりはべるがいと憂きを」
【訳】今まで生き残っておりますのがたいへんつらいので。
【出典】源氏物語 桐壺
A「ここにはべりながら、御とぶらひにもまうでざりけるに」
【訳】ここにおりますのに、お見舞いにもうかがいませんでしたが。◆「はんべり」とも。
【出典】源氏物語 若紫
〜ばや
188.〜したい。
【語呂合わせ】婆やとバーミヤンで中華が食べたい。
「いかで見ばやと思ひつつ」
【訳】どうにかして(その物語を)読みたいと思い続けて。
【出典】更級日記 かどで
ひがひがし
189.@趣を解さない。
A変だ。
【語呂合わせ】ひがひがしは変だ。そのまんま東じゃないと趣を解さない。
@「この雪いかが見ると、一筆のたまはせぬほどのひがひがしからん人の仰せらるること、聞き入るべきかは」
【訳】この雪をどのように見るかと、手紙に一言もおっしゃらないほどの情趣を解さないような人が言われることを、聞き入れることができようか、いや、できない。
【出典】徒然草 三一
A「年ごろ、かく埋もれて過ぐすに耳なども少しひがひがしくなりたるにやあらむ」
【訳】長年このように世の中から引きこもって過ごしているから、耳なども少し(調子が)変になっているのだろうか。
【出典】源氏物語 若菜下
ひねもす
190.一日中。
【語呂合わせ】昼寝もするよ一日中。
「春の海終日(ひねもす)のたりのたりかな」
【訳】うららかな春の日、海は一日中のたりのたりと、おだやかにうねっていることよ。
【出典】蕪村句集 俳諧・蕪村(ぶそん)
ふと
191.簡単に。
【語呂合わせ】ふとるのは簡単だ。
「わが弓の力は、竜(たつ)あらばふと射殺して」
【訳】私の弓の威力は、もし竜がいるならばたやすく射殺して。
【出典】竹取物語 竜の頸の玉
ふみ
192.@書物。
A手紙。
B漢詩。
C学問。
【語呂合わせ】不眠症で書物を読んだり、手紙を書いたり、学問してるとようやく寝れる。
@「男児(をのこご)の、声は幼げにてふみ読みたる、いとうつくし」
【訳】男の子が、声はいかにも幼そうなようすで漢籍を読んでいるのは、とてもかわいらしい。
【出典】枕草子 うつくしきもの
A「大江山(おほえやま)いく野の道の遠ければまだふみもみず天(あま)の橋立(はしだて)」
【訳】大江山を越えて生野(いくの)を通って行く道のりが遠いので、まだ、その先の天の橋立の地を踏んでいませんし、母からの手紙も見ていません。
【出典】金葉集 雑上
B「唐土(もろこし)には限りなきものにて、ふみにも作る」
【訳】(梨(なし)の花は)中国ではこの上なくすばらしいものとして、漢詩にも作る。
【出典】枕草子 木の花は
C「ありたきことは、まことしきふみの道」
【訳】身につけたいことは、正式な学問の道。
【出典】徒然草 一
べし
193.@〜にちがいない。(強い推量)
A〜つもりだ。(強い意志)
【語呂合わせ】「べし」と言うに違いない。本当は「ピョン」と言うつもりだったのに。
@「人は、形・有り様のすぐれたらんこそ、あらまほしかるべけれ」
【訳】人間は容貌(ようぼう)や風采(ふうさい)がすぐれていることこそ、望ましいだろう。
【出典】徒然草 一
A「『宮仕へに出いだし立てば死ぬべし』と申す」
【訳】(かぐや姫は)「(私を)宮仕えに出すならば、死んでしまうつもりだ」と申し上げる。
【出典】竹取物語 御門の求婚
ほい
194.本来の目的。本来の意志。
【語呂合わせ】ホイコウロウを食べるのが本来の目的です。
「ゆかしかりしかど、神へ参るこそほいなれと思ひて、山までは見ず」
【訳】行ってみたかったけれど、(石清水八幡宮(いわしみずはちまんぐう)の)祭神へお参りすることこそ本来の目的であると思い、山までは(行って)見ない。
【出典】徒然草 五二
ほど
195.@身分。
A時間。とき。
B程度。
【語呂合わせ】身のほど(身分)。先ほど(時間)。どれほど。ほどほど。(程度)
@「同じほど、それより下掾iげらふ)の更衣(かうい)たちは」
【訳】(桐壺更衣(きりつぼのこうい)と)同じ身分や、それより低い身分の更衣たちは。
【出典】源氏物語 桐壺
A「ほど経へば、少しうち紛るることもや」
【訳】時間がたてば、少しは気が紛れることもあるだろうか。
【出典】源氏物語 桐壺
B「ある人の毛の穴さへ見ゆるほどなり」
【訳】(明るさは)そこにいる人の毛の穴まで見えるくらいである。
【出典】竹取物語 かぐや姫の昇天
まゐる
196.参上する
【語呂合わせ】まいるなぁ! 3マイルの3乗っていくつ?
「宮に初めてまゐりたるころ」
【訳】中宮様の御殿にはじめてお仕えしたころ。
【出典】枕草子 宮にはじめてまゐりたるころ
まうづ
197.@お参りする。
A参上する。
【語呂合わせ】さまーず、お参りしてから参上する。
@「いでしままに稲荷(いなり)にまうでたらましかば」
【訳】(初瀬から)退出したその足で(伏見の)稲荷に参詣していたならば。
【出典】更級日記 夫の死
A「かくしつつ、まうでつかうまつりけるを」
【訳】このようにしながら参上してお仕え申し上げていたのに。
【出典】伊勢物語 八三
まさなし
198.よくない。見苦しい。卑怯にも。
【語呂合わせ】まさかりなしの金太郎はよくないよ。見苦しいし卑怯なこともするかもよ。
「何をか奉らむ。まめまめしき物はまさなかりなむ」
【訳】何を差し上げようか。実用的な物はきっとよくないだろう。
【出典】更級日記 物語
まし
199.@〜だろうに。(反実仮想)
A〜であればよいのに。
B〜すればよいだろう(か)。
※「…ましかば〜まし」 → もし…だったら〜だろうに
【語呂合わせ】まっしろなマシュマロは美味しいだろうに、焦げてまっ黒。
@「世の中にたえて桜のなかりせば春の心はのどけからまし」
【訳】世の中に、まったく桜がなかったとしたら、春のころの人々の心はのんびりした気分であっただろうに。
【出典】古今集 春上・在原業平(ありはらのなりひら)
A「見る人もなき山里の桜花ほかの散りなむのちぞ咲かまし」
【訳】見る人とてない山里の桜花よ、ほかの花がみんな散ってしまった後に咲いたらいいのに。
【出典】古今集 春上
B「雪降れば木毎(ごと)に花ぞ咲きにけるいづれを梅と分きて折らまし」
【訳】雪が降ったので、どの木にもどの木にも白い花が咲いたことだ。いったいどれを梅の木だとして他の木と区別して折ったらよいものだろう。
【出典】古今集 冬
まじ
200.@決して〜しないつもりだ。(強い打ち消し意志)
Aきっと〜ないだろう(強い打ち消し推量)
B〜てはならない。(打ち消しの当然)
※「え〜まじ」→〜できないにちがいない。
【語呂合わせ】マジックの種は決して教えないつもりだ。わかっても他の人に教えてはならない。
@「わが身は女(をうな)なりとも、敵(かたき)の手にはかかるまじ」
【訳】わたしは女であっても、決して敵の手にはかからないつもりだ。
【出典】平家物語 一一・先帝身投
A「かの国人、聞き知るまじく思ほえたれども」
【訳】あの国の人たちには、きっとわからないだろうと思われたけれども。
【出典】土佐日記 一・二〇
B「妻めといふものこそ男(をのこ)の持つまじきものなれ」
【訳】妻というものは、男が持ってはならないものである。
【出典】徒然草 一九〇
まほし
201.〜たい。(希望)
※あらまほし…「あってほしい」という意味。
【語呂合わせ】魔法しょうじょになりたい。
「紫のゆかりを見て、続きの見まほしく覚ゆれど」
【訳】『源氏物語』の紫の上に関係するところを読んで、続きを読みたく思われるけれども。
【出典】更級日記 物語
〜ままに
202.@〜の通りに。
A〜にまかせて。(心にまかせる)
【語呂合わせ】ママに言われた通りにやってみる。
@「いとどゆかしさまされど、わが思ふままに、そらにいかでかおぼえ語らむ」
【訳】ますます知りたい気持ちがつのるけれど、自分の思うとおりに、(姉たちは物語を)そらんじていてどうして思い出して話せようか、いや、話せない。
【出典】更級日記 かどで
A「つれづれなるままに、日暮らし、硯(すずり)に向かひて」
【訳】することもなく手持ちぶさたなのにまかせて、一日じゅう硯に向かって。
【出典】徒然草 序
まめなり
203.まじめだ。
【語呂合わせ】まめな立派な人はまじめだ。
「まめなる男(をのこ)ども二十人ばかりつかはして」
【訳】忠実な男たち二十人ばかりをそこにおやりになって。[反対語] 徒(あだ)なり。
【出典】竹取物語 燕の子安貝
まらうと
204.客
【語呂合わせ】マラソンうとうと走るとお客さんが怒る。
「にくきもの。急ぐことあるをりに来て長言(ながごと)するまらうと」
【訳】しゃくにさわるもの。急用があるときにやって来て、長話をする客。
【出典】枕草子 にくきもの
まゐる
205.@参上する。
A召し上がる。
【対義語】まかる=退出する。
【語呂合わせ】マイルを貯めるため飛行機で参上し、マイルドなチョコを召し上がる。
@「宮に初めてまゐりたるころ」
【訳】中宮様の御殿にはじめてお仕えしたころ。
【出典】枕草子 宮にはじめてまゐりたるころ
A「ほかにて酒などまゐり、酔ゑひて」
【訳】よそで酒などを召し上がり、酔っぱらって。
【出典】大和物語 一二五
みかど
206.天皇。
【語呂合わせ】ミカンどぉ?と天皇。
「三代(みよ)のみかどに仕うまつりて」
【訳】三代の天皇にお仕え申し上げて。
【出典】伊勢物語 一六
みゆ
207.@見える。
A思われる。感じられる。
【語呂合わせ】中島みゆきは若く見える。
@「梅の花吾家(わぎへ)の園に咲きて散るみゆ」
【訳】梅の花がわが家の庭園に咲いて散るのが見える。
【出典】万葉集 八四一
A「中に、十ばかりにやあらむとみえて、白き衣、山吹などのなえたる着て、走り来たる女子(をんなご)」
【訳】そのなかに、十歳ぐらいであろうかと思われて、白い衣、山吹襲(かさね)などの柔らかくなったのを着て、走って来た少女は。
【出典】源氏物語 若紫
む(ん)
208.@〜だろう。(推量)
A〜(し)よう。(意志)
B〜ような。〜したら(婉曲) ←「む+名詞」のとき
※「ん」といっしょ…助動詞「む」を「ん」と発音したことから「ん」と表記されるようになった
【語呂合わせ】「ムッ」としたら「うん」と納得するだろう。
@「まめまめしき物は、まさなかりなむ」
【訳】実用的な物は、きっとよくないだろう。
【出典】更級日記 物語
A「男はこの女をこそ得えめと思ふ」
【訳】男は(他の女性ではなく)この女性を(妻として)手にいれようと思う。
【出典】伊勢物語 二三
B「思はむ子を法師になしたらむこそ心苦しけれ」
【訳】いとしく思うような子を法師にしたとしたら、それは気の毒である。
【出典】枕草子 思はむ子を
むげなり
209.@あまりにひどい。
Aまぎれもない。
【語呂合わせ】むっ!げんなりするよ、あまりにひどいのはまぎれもない。
@「殊勝のことは御覧じとがめずや。むげなり」
【訳】(こんな)すばらしいことを見てお気づきにならないのか。あまりにひどい。
【出典】徒然草 二三六
A「まして底に書ける物を見るに、むげに落窪(おちくぼ)の君の手なれば」
【訳】いうまでもなく底に書いた物を見ると、まぎれもなく落窪の君の筆跡なので。
【出典】落窪物語 三
むつかし
210.@いやな感じだ。
Aわずらわしい。
B不快だ。
【語呂合わせ】難しい問題はいやな感じだ。
@「手にきり付きて、いとむつかしきものぞかし」
【訳】手に(蝶(ちよう)の鱗粉(りんぷん)が)ついて、とてもいやな感じのものであるよ。
【出典】堤中納言 虫めづる姫君
A「あなづりやすき人ならば、『のちに』とてもやりつべけれど、さすがに心恥づかしき人、いとにくくむつかし」
【訳】軽く扱ってよい人であるならば、「後で」と言って帰してしまうこともできるだろうが、やはり気がねをしなければならないような人のときは、(そうもいかず)本当ににくらしく煩わしい。
【出典】枕草子 にくきもの
B「心地(ここち)あしうしてひさしうなやみたるも、男の心地はむつかしかるべし」
【訳】(あまり愛していない妻が)気分が悪くて長く病んでいるのも、男の気持ちとしてはうっとうしいだろう。
【出典】枕草子 むつかしげなるもの
めでたし
211.すばらしい。
【語呂合わせ】めでたく合格!すばらしい!
「藤(ふぢ)の花は、しなひ長く、色濃く咲きたる、いとめでたし」
【訳】藤の花は、花房のしだれが長く、色が濃く咲いているのが、とてもすばらしい。
【出典】枕草子 木の花は
ものぐるほし
212.気が変になりそうだ。狂おしい気持ちだ。
【語呂合わせ】ものほしぐるぐる回して、ものぐるほしって気が変になりそうだ。
「心にうつりゆくよしなしごとを、そこはかとなく書きつくれば、あやしうこそものぐるほしけれ」
【訳】心に浮かんでは消えてゆくたわいもないことを、とりとめもなく書きつけていると、(思わず熱中して)異常なほど、狂おしい気持ちになるものだ。
【出典】徒然草 序
ものす
213.@いる。ある。
A行く。来る。
※その他、様々な動詞の代わりに使う
【語呂合わせ】ものすごい奴がいる。そして奴は行く。と思ったら来る。
@「いと押し立ち、かどかどしきところものし給(たま)ふ御方(おほんかた)にて」
【訳】たいそう我を張り、とげとげしいところがおありになるお方であって。
【出典】源氏物語 桐壺
A「『いと忍びてものせむ』とのたまひて、…まだ暁におはす」
【訳】「できるだけこっそりと行こう」とおっしゃって、…まだ朝も明けないうちにお出かけになる。
【出典】源氏物語 若紫
やうやう
214.だんだん。
【語呂合わせ】ヨーヨーだんだん上手くなる。
「春はあけぼの。やうやう白くなりゆく山ぎは、少し明かりて」
【訳】春は夜明け方がよい。だんだんと白くなっていく空の、山の稜線(りようせん)に接するあたりが、少し明るくなって。
【出典】枕草子 春はあけぼの
やがて
215.@すぐに。
Aそのまま。
【語呂合わせ】やがて雨はすぐに雪へかわりそのまま降り続くでしょう。
@「名を聞くより、やがて面影は推しはからるる心地するを」
【訳】名前を聞くやいなや、すぐに(その人の)顔つきは見当をつけられるような気がするが。
【出典】徒然草 七一
A「牛は、…腹の下、足、尾の筋などは、やがて白き」
【訳】牛は、…腹の下、足、尾の毛筋などは、そのまま白い(のがよい)。
【出典】枕草子 牛は
やさし
216.@きまりが悪い。
A優美だ。しとやかだ。
【語呂合わせ】やさしくしてきまりが悪い。でも優しさは優美だ!
@「昨日今日御門(みかど)ののたまはむことにつかむ、人聞きやさし」
【訳】ほんの昨日今日、帝(みかど)がおっしゃることに従うとしたら、世間への手前きまりが悪い。
【出典】竹取物語 御門の求婚
A「いと若やかに愛敬(あいぎやう)づき、やさしきところ添ひたり」
【訳】とても若々しくかわいらしく、しとやかなところが加わっている。
【出典】源氏物語 蜻蛉
〜やは
217.〜(であろう)か、いやない。
【語呂合わせ】やわらかいダイヤモンドがあろうか、いやない。
「このごろはかやうなることやは聞こゆる」
【訳】このごろはこのようなことは耳にするだろうか、いや、耳にすることはない。
【出典】枕草子 清涼殿の丑寅のすみの
やまぎは
218.空の、山に接する部分。
※(「山際」→空の、山に接する部分)
【語呂合わせ】やぁ!まぎわになったけど、空の山に接する部分に到着したよ。
「やうやう白くなりゆくやまぎは、少し明かりて」
【訳】だんだんと白くなっていく空の、山の稜線に接するあたりが、少し明るくなって。
【出典】枕草子 春はあけぼの
やむごとなし
219.@大切だ。この上ない。
A高貴だ。
【語呂合わせ】やむことなしでも雨は大切だ。
@「摂津守(せつつのかみ)も、これらをやむごとなき者にして、後前に立ててぞつかひける」
【訳】摂津守もこれらの兵を格別に大切な者と考えて、自分の前後に立たせて使った。
【出典】今昔物語集 二八・二
A「いとやむごとなききはにはあらぬが、すぐれて時めき給(たま)ふありけり」
【訳】それほど高貴な身分ではない方で、際だって帝(みかど)のご寵愛(ちようあい)を受けて栄えていらっしゃる方があった。
【出典】源氏物語 桐壺
ゆかし
220.知りたい。見たい。
【語呂合わせ】床下に小トトロがいるか知りたいな。
「忍びて寄する車どものゆかしきを」
【訳】目立たないようにそっとやって来る牛車(ぎつしや)の主が知りたくて。
【出典】徒然草 一三七
ゆゆし
221.@不吉だ。
Aすばらしい。立派だ。
【語呂合わせ】You!You!死相が出ていて不吉だ。だけど手相はすばらしい。
@「たちいづる天の川辺のゆかしさに常はゆゆしきことも忘れぬ」
【訳】(牽牛(けんぎゆう)と織女が)出会う天の川辺に心が引かれて、いつもは不吉なことも(今日は)忘れてしまった。
【出典】更級日記 大納言殿の姫君
A「徒人(ただびと)も、舎人(とねり)など賜る際(きは)はゆゆしと見ゆ」
【訳】ふつうの貴族でも、随身などを(朝廷から)いただくような身分の人は、すばらしいと思われる。
【出典】徒然草 一
ゆゑ
222.@原因。理由。
A〜のために。〜によって(原因・理由を表す)
【語呂合わせ】湯へ入れない原因は、お風呂が壊れているためです。
@「深きゆゑあらん」
【訳】なみたいていではないわけがあるのだろう。
【出典】徒然草 二三六
A「子ゆゑにこそ、万(よろづ)のあはれは思ひ知らるれ」
【訳】子(を持つこと)によってこそ、すべての(人の)情けは思いあたって理解できるものである。
【出典】徒然草 一四二
よし
223.@理由。
A手段。方法。
【語呂合わせ】よし!理由を言ってみろ。
@「心づきなき事あらん折は、なかなかそのよしをも言ひてん」
【訳】気にくわないことがあるようなときには、かえってその理由をも言ってしまうのがよい。
【出典】徒然草 一七〇
A「つれづれのながめにまさる涙川袖(そで)のみひぢてあふよしもなし」
【訳】降りつづく雨にすることもなく物思いに沈んでいると、あなたのことがいよいよ恋しく、落ちる涙の川は水かさがまして袖はぬれますがあなたにお会いする手段とてありません。
【出典】伊勢物語 一〇七
よしなし
224.@仕方がない。方法がない。
Aくだらない。
※「よしなしごと」…とりとめもないこと・つまらないこと
【語呂合わせ】よし!ナシは仕方がないからおやつとして認める。だがバナナは認めん!…あぁ、くだらない。
@「しばしば痛み苦しび、癒いゆるによしなし」
【訳】たびたび痛がり、苦しみ、回復するのに方法がない。
【出典】霊異記 上
A「我はものへ行かむずる門出なれば、はかなき疵(きず)も打ちつけられなばよしなし」
【訳】私は(これから)ある所へ行こうという門出のときなので、ほんの少しの傷も負ってしまったらつまらない。
【出典】今昔物語集 二八・四二
よすが
225.@手段。方法。
A頼り。身や心を寄せる所。
【語呂合わせ】ようすがおかしい。手段を変えよう。ほほう。私を頼りにする気になったかね。
@「嵐(あらし)をふせぐよすがなくてはあられぬわざなれば」
【訳】嵐を防ぐ手段がなくては生きていけないことなので。
【出典】徒然草 五八
A「ほととぎすのよすがとさへおもへばにや」
【訳】(橘(たちばな)は)ほととぎすが身を寄せる所とまで思うからであろうか。
【出典】枕草子 木の花は
よむ
226.和歌を作る。
詩歌を作る。
【語呂合わせ】用務員さん和歌を作る。
「かきつばたといふ五文字(いつもじ)を句の上(かみ)に据ゑて、旅の心をよめ」
【訳】かきつばたという五文字を句のはじめに置いて、旅における感慨を和歌に作れ。
【出典】伊勢物語 九
〜より
227.〜によって。〜で(手段、方法を表す)
【語呂合わせ】よりによって。
「徒歩(かち)よりまうでけり」
【訳】(仁和寺の法師が)徒歩で(石清水八幡宮(いわしみずはちまんぐう)に)参詣(さんけい)した。
【出典】徒然草 五二
よろづ
228.@あらゆる。
Aたくさん。
【語呂合わせ】「よろづくね!」とたくさんの人に言う。
@「よろづの遊びをぞしける」
【訳】あらゆる音楽を奏した。
【出典】竹取物語 かぐや姫の生ひ立ち
A「やまと歌は、人の心を種として、よろづの言(こと)の葉とぞなれりける」
【訳】和歌は、人の心をもととして、たくさんの言葉となったものである。
【出典】古今集 仮名序
らうたし
229.愛らしい。かわいらしい。
【語呂合わせ】私ら歌うし、愛らしいし!
「をかしげなる児(ちご)の、あからさまに抱(いだ)きて遊ばしうつくしむほどに、かい付きて寝たる、いとらうたし」
【訳】愛らしい赤ん坊が、ちょっと抱いてあやしてかわいがっていると、(そのまま私に)しがみついて寝てしまったのは、とてもかわいらしい。
【出典】枕草子 うつくしきもの
り
230.@〜た。(完了)
A〜ている。(存続)
【語呂合わせ】ブルース・リーの映画で感動した。リーはずっと心に生き続けている。
@「くらもちの皇子(みこ)は優曇華(うどんげ)の花持ちて上り給(たま)へり」
【訳】くらもちの皇子は優曇華の花を持って都へお上りになった。
【出典】竹取物語 蓬莱の玉の枝
A「富士の山を見れば、五月(さつき)のつごもりに、雪いと白う降れり」
【訳】富士の山を見ると、五月の下旬だというのに、雪がとても白く降り積もっている。
【出典】伊勢物語 九
れい
231.いつも。ふだん。
【語呂合わせ】礼をしていつも授業が終わる。
「験者(げんざ)もとむるに、れいある所にはなくて」
【訳】修験者を探し求めるが、ふだんいる所にはいなくて。
【出典】枕草子 にくきもの
わざ
232.@行為。おこない
A技術
B法要、仏事、行事
【語呂合わせ】わざと反則行為をした場合は、技術指導のため法要に行ってもらいます。
@「我がもてつけたるをつつみなくいひたるは、あさましきわざなり」
【訳】自分が使い慣れている言葉を遠慮なく言うのは、情けない行為である。
【出典】枕草子 ふと心おとりとかするものは
A「武士の事・弓馬(きゆうば)のわざは」
【訳】武士のことや弓・馬などの(戦闘のための)技術は。
【出典】徒然草 二二六
B「なき人の来る夜よとて魂(たま)まつるわざは、このごろ都にはなきを」
【訳】亡くなった人が帰ってくる夜といって魂をまつる行事は、このごろ都では行われないが。
【出典】徒然草 一九
わたる
233.@通る。行く。
A一面に〜する
【語呂合わせ】横断歩道をわたり、しばらく行くと一面に桜が咲いている。
@「ちご遊ばする所のまへわたる」
【訳】赤ん坊を遊ばせている前を通り過ぎる(のは心がどきどきする)。
【出典】枕草子 心ときめきするもの
A「夕霧立ちわたりて」
【訳】夕霧が一面に立ちこめて。
【出典】更級日記 かどで
わびし
234.つらい。
【語呂合わせ】おわびとして、わさびたっぷりのお寿司はつらいなぁ。
「やうやう暑くさへなりて、まことにわびしくて、など、かからでよき日もあらむものを、何しにまうでつらむと」
【訳】(参詣(さんけい)の坂道の途中で)だんだん暑くまでなってきて、とてもつらくて、どうして、こんなふうでない、(ほかに参詣に)よい日もあるだろうに、何のためにお参りしたのだろうと。
【出典】枕草子 うらやましげなるもの
わらは
235.子供。
【語呂合わせ】笑わせた方の子供が勝ち。
「まだわらはなる君など、いとをかしくておはす」
【訳】まだ(元服前の)子供である君達など、たいそうかわいくていらっしゃる。
【出典】枕草子 小白河といふ所は
われ
236.わたくし。自分
【語呂合わせ】割れたのはわたくしのお皿。
「大勢のなかにとりこめて、われうっとらんとぞすすみける」
【訳】大勢のなかにおしこめて、自分こそ討ち取ろうと進み出た。
【出典】平家物語 九・木曾最期
わろし
237.@よくない。
Aみっともない。
【語呂合わせ】わぁ!ロシア寒すぎ!体によくない。
@「男も女も、ことばの文字いやしうつかひたるこそ、よろづのことよりまさりてわろけれ」
【訳】男でも女でも、言葉遣いを下品につかったのは、どんなことにもまして好ましくない。
【出典】枕草子 ふと心おとりとかするものは
A「昼になりて、ぬるくゆるびもていけば、火桶(ひをけ)の火も白き灰がちになりてわろし」
【訳】昼になって、だんだん生暖かく、(寒さが)やわらいでいくと、丸火鉢の炭火も白い灰が目立つ状態になって、みっともない。
【出典】枕草子 春はあけぼの
ゐる
238.座る。
【語呂合わせ】イルカが座ったらびっくりだ。
「その沢のほとりの木の陰に下りゐて」
【訳】その沢のほとりの木の陰に、馬から降りて座って。
【出典】伊勢物語 九
をかし
239.@おかしい。変だ
A興味深い
B趣がある
C美しい。愛らしい
Dすぐれている
【語呂合わせ】このお菓子はおかしい。でも美しく趣があるので興味深い。
@「妻め『をかし』と思ひて、笑ひてやみにけり」
【訳】妻は「こっけいだ」と思って、笑って(責めるのを)やめた。
【出典】今昔物語集 二八・四二
A「また、野分の朝(あした)こそをかしけれ」
【訳】また、台風の(あった)翌朝(のありさま)は興味深い。
【出典】徒然草 一九
B「まいて雁(かり)などの連ねたるが、いと小さく見ゆるは、いとをかし」
【訳】いうまでもなく雁などが連なって(飛んで)いるのが、とても小さく見えるのは、たいそう趣がある。
【出典】枕草子 春はあけぼの
C「けづることをうるさがり給(たま)へど、をかしの御髪(みぐし)や」
【訳】髪をとかすことをめんどうがりなさるけれど、美しい御髪(おぐし)だこと。
【出典】源氏物語 若紫
D「笛をいとをかしく吹き澄まして、過ぎぬなり」
【訳】笛をとても見事に一心に吹いて、通り過ぎて行ってしまったようだ。
【出典】更級日記 大納言殿の姫君
をし
240.かわいい。いとしい。
【語呂合わせ】おしめしているかわいい赤ん坊。
「人もをし人も恨(うら)めしあぢきなく世を思ふゆゑに物思ふ身は」
【訳】(ある時には)人をいとおしく思い、(またある時には)人を恨めしく思う。おもしろくないとこの世を思うがゆえに、さまざまに思い悩む私は。
【出典】続後撰集 雑中
をりふし
@季節。
Aちょうどそのとき。
Bときどき。たまに。
【語呂合わせ】かきごおり、ふしぎと食べたくなる季節。
@「をりふしのうつりかはるこそ、ものごとにあはれなれ」
【訳】季節が移り変わっていくようすこそ、なにごとにつけても趣深いものである。
【出典】徒然草 一九
A「谷々の氷うちとけて、水はをりふしまさりたり」
【訳】谷々の氷が解けて、水かさはちょうどそのとき増していた。
【出典】平家物語 九・宇治川先陣
B「をりふしあはれなる作意など聞こゆ」
【訳】ときどき趣深い趣向など(の句をよんでいるのが)聞こえる。
【出典】奥の細道 汐越の松