1.古文の語句 81〜160






81.
きこしめす

お聞きになる。

【語呂合わせ】貴公子メスですか?とお聞きになる

「『…』など語りいでさせ給(たま)ふを、上もきこしめし、めでさせ給ふ」

【訳】「…」などと(定子中宮様が)お話しになるのを(一条)天皇もお聞きになり、お褒めになる。
【出典】枕草子 清涼殿の丑寅のすみの
82.
きこゆ

申し上げる。 ※「言ふ」の謙譲語。

【語呂合わせ】聞こえるように申し上げる

「よろづの事を泣く泣く契りのたまはすれど、御いらへもえきこえ給(たま)はず

【訳】(帝(みかど)が)すべてのことを泣く泣くお約束なさるけれど、(桐壺更衣(きりつぼのこうい)は)ご返事も申し上げることがおできになれない
【出典】源氏物語 桐壺
83.
ぐす

連れて行く。

【語呂合わせ】鼻がグスグスぐすり屋さんに連れて行く

「木曾殿の最後のいくさに、女をぐせられたりけりなんど言はれんことも、しかるべからず」

【訳】木曾(義仲(よしなか))殿が最後の合戦にまで、女をお連れになっていたなどと言われるのは、残念である。
【出典】平家物語 九・木曾最期
84.
くだる

(都から地方へ)行く。下向する。

【語呂合わせ】この道をくだる都から地方へ行けるよ。

「まづ胸あくばかりかしづきたてて、ゐてくだりて

【訳】まず気持ちが晴れるほどあなたをことさら大切に育てあげて、伴って任地に下向して
【出典】更級日記 子忍びの森
85.
くちをし

残念だ。

【語呂合わせ】似顔絵で口を失敗!残念だ

くちをしう、男子(をのこご)にて持たらぬこそ幸ひなかりけれ」

【訳】残念なことに、(この娘が)男子でないのが、幸運でなかったのだ。
【出典】紫式部日記 消息文
86.
けう

珍しい。

【語呂合わせ】毛うすい羊とは珍しい

「物を繰り出いだすやうに言ひ続くる程ぞ、まことにけうなるや

【訳】糸か何かを順々に引き出すように次から次へと話し続けるようすは、本当に珍しいことであるよ
【出典】大鏡 時平
87.
けしき

様子。態度。表情。機嫌。

【語呂合わせ】結婚式様子態度

「切(せち)に物思へるけしきなり」

【訳】しきりに物思いにふけっているようすである。
【出典】竹取物語 かぐや姫の昇天
88.
げに

@なるほど。
A本当に。

【語呂合わせ】下人なるほど本当につらい。

@「いかでとく京へもがなと思ふ心あれば、この歌よしとにはあらねど、げにと思ひて人々忘れず」

【訳】なんとかして早く京に帰りたいと思う心があるので、この歌は上手だというのではないが、(歌の心情を)なるほどと思って人々は忘れない。
【出典】土佐日記 一・一一


A「またゐたる大人、『げに』とうち泣きて」

【訳】もう一人(そこに)座っていた年配の女房が、「本当に、まあ」とふっと涙をこぼして。
【出典】源氏物語 若紫
89.
けはひ

@雰囲気。様子。
A態度。

【語呂合わせ】毛はい(生え)薬で雰囲気一新。

@「秋のけはひ入り立つままに、土御門殿(つちみかどどの)のありさま、言はむ方(かた)なくをかし」

【訳】秋の雰囲気が深まるにつれ、(藤原道長(ふじわらのみちなが)様の)土御門邸のようすは言いようもなく趣がある。
【出典】紫式部日記 寛弘五・七・中


A「大方のけしき、人のけはひも、けざやかに気高く」

【訳】邸内一帯のようすも、姫君の態度も、すっきりとしていて上品で。
【出典】源氏物語 帚木
90.
けむ

〜ただろう。(過去推量)

【語呂合わせ】けむりはさんまを焼いていたのだろう

「なほ奥つ方に生おひ出いでたる人、いかばかりかはあやしかりけむを」

【訳】さらに奥まった所(=上総(かずさ)の国)で成長した人(である私)は、どんなにか田舎じみていただろうに。
【出典】更級日記 かどで
91.
けり

@〜た。(過去)
A〜だなあ。(詠嘆)

【語呂合わせ】蹴りを入れキックボクサーはかっこいいなあ

@「今は昔、竹取の翁(おきな)といふ者ありけり

【訳】今となってはもう昔のことだが、竹取の翁という人がいた
【出典】竹取物語 かぐや姫の生ひ立ち


A「年の内に春は来にけりひととせを去年(こぞ)とやいはむ今年とやいはむ」

【訳】年内に立春が来てしまったのだなあ。同じこの一年のことを、去年と言ったものか、今年と言ったものか。
【出典】古今集 春上
92.

これ。ここ。

【語呂合わせ】っ!これここにおいていい?

「霍公鳥(ほととぎす)春日(かすが)を指してこゆ鳴き渡る」

【訳】ほととぎすが、春日をさしてここを鳴いて行く。
【出典】万葉集 一九五九
93.
ここち

気持ち。

【語呂合わせ】心地よい気持ち

「荒れも戦はで、ここちただ痴しれに痴れてまもりあへり」

【訳】(武士たちは)荒々しく戦うこともしないで、気持ちがただもうぼんやりとなって(お互いに)見つめあっていた。
【出典】竹取物語 かぐや姫の昇天
94.
こころうし

@つらい。情けない。
A不愉快だ。

【語呂合わせ】心ウシだとつらい。でも顔がウシだと不愉快だよ。

@「罪得うることぞと常に聞こゆるを、こころうく

【訳】(すずめを捕らえることは)仏罪になることですよ、といつも申し上げているのに、(お聞き入れにならないで)情けなく
【出典】源氏物語 若紫


A「かぎりなく妬(ねた)くこころうしと思ふを、忍ぶるになむありける」

【訳】この上なくいまいましく不快だと思っているのを、じっと我慢しているのであった。
【出典】大和物語 一四九
95.
こころさかし

きもちがしっかりしている

【語呂合わせ】子(どもの)頃サッカーしてた人は気持ちがしっかりしている

「中にこころさかしき者、念じて射むとすれども」

【訳】(気後れしている護衛の者の)中で気持ちがしっかりしている者が、無理して(天からの使者を)射ようとするけれども。
【出典】竹取物語 かぐや姫の昇天
96.
こころなし

思いやりがない。無情だ。

【語呂合わせ】心がない思いやりがない

「しばしばも見放(みさ)けむ山をこころなく雲の隠さふべしや」

【訳】幾度も望み見たい山なのに、無情にも雲が隠してよいものか。
【出典】万葉集 一七・額田王(ぬかたのおほきみ)
97.
こころもとなし

不安だ
【対義語】こころやすし

【語呂合わせ】壊れそうな橋を渡るのは心もとない…。不安だぁ!

こころもとなき日数重なるままに、白河の関にかかりて、旅心定まりぬ」

【訳】不安で落ち着かない日々が重なるうちに、白河の関にさしかかって、ようやく旅の覚悟が定まった。
【出典】奥の細道 白河の関
98.
こころやすし

安心だ
【対義語】こころもとなし

【語呂合わせ】ここ牢屋すしを食べれば安心だ

「今ぞこころやすく黄泉(よみぢ)もまかるべき」

【訳】今こそ安心してあの世へも行くことができる。
【出典】大鏡 序
99.
こと

@言葉。
A和歌。
Bうわさ
※「言」「事」「殊」「異」など、「こと」は色々あるので注意。

【語呂合わせ】ことりの言葉和歌に聞こえる。

@「唐土(もろこし)とこの国とはこと異なるものなれど」

【訳】中国と日本とでは言語が違うのであるが。
【出典】土佐日記 一・二〇


A「これに、ただいまおぼえむふるきことを一つづつ書け」

【訳】この色紙に、いますぐ思い出されるような古い和歌を一首ずつ書け。
【出典】枕草子 清涼殿の丑寅のすみの


B「君によりことの繁(しげ)きを故郷(ふるさと)の明日香(あすか)の川にみそぎしに行く」

【訳】あなたのことでうわさがしきりなので、旧都である明日香の川にみそぎをしに行く。
【出典】万葉集 六二六
100.
ことさむ

興ざめする。しらける。

【語呂合わせ】今年は寒くて興ざめする

「酒宴ことさめて」

【訳】酒宴も興ざめになって。
【出典】徒然草 五三
101.
ごとし

〜のようだ。(比況・たとえ)
似ている。

【語呂合わせ】郷(ひろみ)歳をとっても20代のようだ

「世の中にある人とすみかと、またかくのごとし

【訳】世の中にいる人間と住居と(が無常なこと)は、また、これと似ている
【出典】方丈記
102.
ことわり

道理。筋道。

【語呂合わせ】断り方にも道理がある。

「かほどのことわり、たれかは思ひよらざらんなれども」

【訳】(無常という)この程度の道理は、だれでも思いつかないはずはないのだが。
【出典】徒然草 四一
103.

そう。そのように。

【語呂合わせ】ぁ、そういうことは知らないよ。

「まことにさにこそ候ひけれ」

【訳】本当にそうでございました。
【出典】徒然草 四一
104.
さうざうし

物足りない。さびしい。

【語呂合わせ】騒々しくないとさびしいな。

「この酒を独りたうべんがさうざうしければ」

【訳】この酒を一人でいただくのが物足りないので。
【出典】徒然草 二一五
105.
さうなし

素晴らしい。比べるものがない。

【語呂合わせ】サウナしんどいけど素晴らしい

「園(その)の別当入道はさうなき庖丁者なり」

【訳】園の別当入道はすばらしい料理人である。
【出典】徒然草 二三一
106.
さうらふ・さぶらふ

@お仕え申し上げる。
Aあります。おります。ございます。
※「さうらふ」は男性が、「さぶらふ」は女性が用いた。

【語呂合わせ】三郎お仕え申し上げる

@「兼平(かねひら)一人(いちにん)さうらふとも、余の武者千騎とおぼしめせ」

【訳】この兼平一人だけがおそばにお仕えしても、他の千騎の武者にも劣らないとお考えくださいませ。
【出典】平家物語 九・木曾最期


A「事のたとへさうらふぞかし」

【訳】事のたとえがございますよ。
【出典】平家物語 七・実盛
107.
さがなし

@たちが悪い。
A口うるさい。口が悪い。

【語呂合わせ】魚死んだのはたちが悪いいたずら。

@「春宮(とうぐう)の女御(にようご)のいとさがなくて

【訳】皇太子の母の女御が、たいそう意地悪であって
【出典】源氏物語 桐壺


A「着給(たま)へる物どもをさへ言ひ立つるも、物言ひさがなきやうなれど」

【訳】お召しになっているもののことまであれこれ言うのも、言い方が口うるさいようだが。
【出典】源氏物語 末摘花
108.
さとし

賢い。

【語呂合わせ】サトシ君は賢い

「七つになり給(たま)へば書(ふみ)始めなどせさせ給ひて、世に知らずさとうかしこくおはすれば」

【訳】(源氏が)七歳におなりになるので学問始めの儀式などあそばされるが、世に二人とないほど、理解が早く賢くいらっしゃるので。
【出典】源氏物語 桐壺
109.
さぶらふ

@お仕えする。
Aございます。

【語呂合わせ】さぁ、フラフープでございます

@「物語などして集まりさぶらふに」

【訳】話などをしながら(女房たちが)集まり(中宮のおそばに)お控え申し上げているときに。
【出典】枕草子


A「御前(ごぜん)にさぶらふ物は、御琴も御笛もみなめづらしき名つきてぞある」

【訳】天皇のお手元にございます物は、お琴もお笛もみなすばらしい名前が付いている。
【出典】枕草子
110.
さま

@様子。
A趣。

【語呂合わせ】サンマ様子はどう?表向きです…。

@「寺のさまもいとあはれなり」

【訳】寺の様子もたいそう尊く、ありがたい。
【出典】源氏物語 若紫


A「言(こと)の心を、男文字に、さまを書き出いだして」

【訳】歌の意味を、漢字で、を書き出して。
【出典】土佐日記 一・二〇
111.
さらでも

そうでなくても

【語呂合わせ】皿でも持ってきましょう。そうでなくてもっと料理を持ってきて。

「霜のいと白きも、またさらでもいと寒きに、火など急ぎおこして」

【訳】霜がたいそう白い朝でも、またそうでなくてもたいそう寒い朝に、火などを急いでおこして。
【出典】枕草子 春はあけぼの
112.
さらなり

言うまでもない。

【語呂合わせ】これは皿なり言うまでもなく吾輩はコロ助なり!

「夏は夜。月のころはさらなり

【訳】夏は夜(がいい)。月の眺めのよいころは言うまでもない
【出典】枕草子 春はあけぼの
113.
さらに

(後に打消が来て)決して。絶対に。

【語呂合わせ】この皿に決してシチューを盛るな!なぜなら…。

さらにまだ見骨のさまなり」

【訳】全然見たこともない(すばらしい扇の)骨のようすである。
【出典】枕草子 中納言まゐり給ひて
114.
さらば

そうしたら。それならば。

【語呂合わせ】「さらば」と言った。そうしたらバイバイと手を振った。

「和歌一つづつ仕(つか)うまつれ。さらば許さむ」

【訳】(お祝いの)和歌を一首ずつお詠み申せ。そうしたら許そう。
【出典】紫式部日記 寛弘五・一一・一
115.
さりとて

そうかといって。

【語呂合わせ】シャリ(さり)とてもおいしい。そうかといってネタが腐ってるのはどうかと…。

「さりとて、し出いださんを待ちて寝ざらんもわろかりなんと思ひて」

【訳】そうかといって、(ぼたもちを)作り上げるのを待って寝ないようなのもよくはないだろうと思って。
【出典】宇治拾遺 一・一二
116.
さる(連体詞)

そのような。立派な。

【語呂合わせ】サルそのような立派な服着てびっくり。

「別当(べつたう)入道、さる人にて」

【訳】別当入道は、そのような(気の利く)人物であって。
【出典】徒然草 二三一
117.
さる(動詞)

@(季節や時刻を表す語に付いて)来る。なる。
A遠ざかる。遠ざける。

【語呂合わせ】サルが夏になると暑いところから遠ざかる

@「夕されば門田(かどた)の稲葉おとづれて」

【訳】夕方になると、門前の田の稲の葉にさやさやと音を立てて、蘆葺(あしぶ)きの粗末(そまつ)なこの仮小屋に、秋風が吹いてくるよ。
【出典】金葉集 秋


A「あながちに御前(おまへ)さらずもてなさせ給(たま)ひしほどに」

【訳】(桐壺更衣(きりつぼのこうい)を)無理やりおそばから離さないで(帝(みかど)が)お扱いになっていらっしゃるうちに。
【出典】源氏物語 桐壺
118.

@〜するつもりはない。 〜しないつもりだ。(打ち消し意志)
A〜ないだろう。(打ち消し推量)
※「え〜じ」→〜できないだろう。

【語呂合わせ】痔(ぢ)にはならないだろう

@「身をえうなきものに思ひなして、京にはあら、あづまの方に住むべき国求めにとて」

【訳】自分の身を(世間に)役に立たないものと(ことさら)思って、京には住むつもりはない、東国の方に住むのにふさわしい国を探し求めるためにと思って。
【出典】伊勢物語 九


A「僧都(そうづ)は、よもさやうには据ゑ給(たま)はを」

【訳】僧都は、まさかそのようには(女性を)住まわせなさらないだろうに。
【出典】源氏物語 若紫
119.
しのぶ

@我慢する。
A懐かしむ。

【語呂合わせ】しのぶさん、昔結婚していた時は我慢したわと懐かしむ

@「心地には、かぎりなく嫉(ねた)く心憂(こころう)しと思ふを、しのぶるになむありける」

【訳】女は心の中ではこの上なくくやしくつらいと思っているのを、我慢しているのであった。
【出典】大和物語 一四九


A「浅茅(あさぢ)が宿に昔をしのぶこそ」

【訳】茅(ちがや)が茂っている荒れた家に、(恋人と語らった)昔を懐かしむことこそ。
【出典】徒然草 一三七
120.
しばし

しばらく。

【語呂合わせ】いしばししばらく渡れません。

「いささかに雨降る。しばしありてやみぬ」

【訳】ほんの少し雨が降る。しばらくしてやんでしまった。
【出典】土佐日記 一・一三
121.
しむ

〜せる。〜させる(使役)

【語呂合わせ】志村けんにバカ殿をさせる

「愚かなる人の目をよろこばしむる楽しみ、またあぢきなし」

【訳】愚かな人の目を楽しませる快楽(というの)も、同様につまらないものだ。
【出典】徒然草 三八
122.
しるし

@ご利益。
A効果。
Bきざし。
C証拠。

【語呂合わせ】シルシルミシルでご利益があるか証拠を見つける。

@「稲荷(いなり)より給ふしるしの杉よ」

【訳】お稲荷様から下さるご利益の(ある)杉だよ。
【出典】更級日記 夫の死


A「しるしなき物を思はずは一坏(ひとつき)の濁れる酒を飲むべくあるらし」

【訳】かいのない物思いなんかしないで、一杯の濁った酒を飲むべきであるらしい。
【出典】万葉集 三三八


B「かの鬼の虚言(そらごと)は、このしるしを示すなりけり」

【訳】あの鬼についてのうその話は、この(人々が病気になるという)前兆を示すものだったのだ。
【出典】徒然草 五〇


C「亡き人の住みか尋ね出いでたりけむしるしの釵(かんざし)ならましかば」

【訳】亡くなった人の住みかを捜し出してきたという証拠のかんざしであったとしたら(うれしいのに)。
【出典】源氏物語 桐壺
123.

する。
※様々な動詞の代わりをする。現在の「する」と同じ。

【語呂合わせ】入りそばをするするっとすする

「男もなる日記(にき)といふものを」

【訳】男も書くという日記というものを。
【出典】土佐日記 一二・二一
124.

〜ない。(打ち消し)

【語呂合わせ】ズーは動物園で水族館ではない

「京には見えぬ鳥なれば、みな人見知ら

【訳】都では見かけない鳥であるので、そこにいる人は皆、よく知らない
【出典】伊勢物語 九
125.
すさまじ

@おもしろくない。
A寒々としている
B冷たい
Cものすごい

【語呂合わせ】すさまじおもしろくなくものすごく寒々とした空気になった。

@「梨(なし)の花、よにすさまじきものにして、近うもてなさず」

【訳】梨の花は、まったくおもしろくないものとして、身近には取り扱わない。
【出典】枕草子 木の花は


A「すさまじきものにして見る人もなき月の」

【訳】殺風景なものとして見る人もない(冬の)月が。
【出典】徒然草 一九


B「風すさまじかりける朝(あした)なれば」

【訳】風が冷たかった朝なので。
【出典】平家物語 六・紅葉


C「すさまじき者の固めたる門へ寄せ当たりぬるものかな」

【訳】ものすごい者が守っている門に攻めてきてしまったものだな。
【出典】保元物語 中
126.
すずろなり

@なんとなく。
A思いがけなく

【語呂合わせ】鈴ローソンでなんとなく購入。

@「いみじく泣くのを見給(たま)ふも、すずろに悲し」

【訳】(尼君が)ひどく泣くのを(源氏が)ご覧になるのも、何とはなしに悲しい気がする。
【出典】源氏物語 若紫


A「つた・かへでは茂り、もの心細く、すずろなる目を見ることと思ふに」

【訳】つたやかえでが茂っていて、なんとなく心細く、思いがけない(ひどい)目にあうことだと感じていると。
【出典】伊勢物語 九
127.
すでに

すっかり。ちょうど。まさに。

【語呂合わせ】すでにすっかり夏ですね。

「天(あめ)の下すでに覆(おほ)ひて降る雪の光を見れば貴(たふと)くもあるか」

【訳】地上をすっかり覆って降る雪の光を見ていると、尊く思われることだ。
【出典】万葉集 三九二三
128.
すなはち

すぐに。ただちに。

【語呂合わせ】すなわちすぐに行きましょう!

「かくわびしれたる者どもの、ありくかと見れば、すなはち倒れ伏しぬ」

【訳】このようにつらい目にあってぼけたようになっている者たちが、歩いているかと思うと、すぐに倒れて横たわってしまう。
【出典】方丈記
129.
すべ

方法。手段。

【語呂合わせ】スベスベお肌になる方法

「夷(えびす)は弓引くすべ知らず、仏法知りたる気色(きそく)し」

【訳】東国の荒武者は弓を引く方法も知らないで、仏法を心得ているような顔をし。
【出典】徒然草 八〇
130.
せうそこ

手紙。手紙を書くこと。

【語呂合わせ】どーせ嘘こいて手紙を書いたんでしょ。(「せうそこ」は漢字で『消息』)

「日ごろ経ふるまで、せうそこもつかはさず、あくがれまかりありくに」

【訳】何日かたつまで、(女に)手紙もやらず、ふらふらとさまよい出歩いておりますうちに。
【出典】源氏物語 帚木
131.
そうす

(天皇に)申し上げる。

【語呂合わせ】そうッす!と天皇に申し上げる

「上りて、帝(みかど)に、かくなむありつるとそうしければ」

【訳】使いの者は上京して、天皇にこれこれだったと申し上げたところ。
【出典】更級日記 竹芝寺
132.
そこはかとなし

@どことはっきりしない。
Aとりとめもない

【語呂合わせ】底はかかとなしの靴。どこで売ってるかははっきりしない

@「そこはかとなき虫の声々聞こえ」

【訳】(鳴いているところが)どことはっきりしない虫の声々が聞こえ。
【出典】源氏物語 帚木


A「心にうつりゆくよしなし事を、そこはかとなく書きつくれば」

【訳】心に浮かんではきえてゆくたわいもないことを、とりとめもなく書きつけていると。
【出典】徒然草 序
133.
そこら

たくさん。

【語呂合わせ】みそコーラたくさん売れ残った。

そこらの年ごろ、そこらの金(こがね)給(たま)ひて」

【訳】多くの年月の間、たくさんの黄金をくださって。
【出典】竹取物語 かぐや姫の昇天
134.
たがふ

@違う。
Aさからう。

【語呂合わせ】うたがうたおうとしたのと違う!とさからう

@「ただ悲しげなりと見し鏡の影のみたがはぬ、あはれに心憂し」

【訳】ただ悲しそうだと見た鏡の姿だけが、違わなかったのが、悲しくも情けない。
【出典】更級日記 夫の死


A「ついで悪あしきことは、人の耳にもさかひ、心にもたがひて、そのこと成らず」

【訳】折の悪い事柄は、他人の耳にも逆らい、心にも背いて、その事柄が成就しない。
【出典】徒然草 一五五
135.
たぐひ

@例。同類。
A種類。
B仲間。

【語呂合わせ】たぐいまれな仲間

@「人々まじなひわづらひしを、やがてとどむるたぐひ、あまた侍(はべ)りき」

【訳】人々がまじなっても(効き目が出ず)困っていたのを、すぐに治した例が、たくさんございました。
【出典】源氏物語 若紫


A「男女(なんによ)死ぬるもの数十人、馬・牛のたぐひ辺際(へんさい)を知らず」

【訳】男女で死んだ者は数十人、馬や牛のようなもの(に至ってはその)際限を知らない。
【出典】方丈記 


B「同じさまにものし給(たま)ふなるを、たぐひになさせ給へ」

【訳】私と同じ境遇でいらっしゃるそうなので、仲間になさってください。
【出典】源氏物語 若紫
136.
たてまつる

@さしあげる。(動詞)
A申しあげる。(補助動詞)
B召しあがる。お召しになる。

【語呂合わせ】盾祭りで盾をお買い申しあげる

@「人に物を取らせたるも、ついでなくて、『これをたてまつらん』と言ひたる、まことの志なり」

【訳】人に物を与える場合も、何のきっかけもなくて、「これを差し上げましょう」と言っているのが本当の誠意である。
【出典】徒然草 二三一


A「九月二十日のころ、ある人に誘はれたてまつりて

【訳】九月二十日ごろ、ある人に誘われ申し上げて
【出典】徒然草 三二


B「一人の天人言ふ、『壺(つぼ)なる御薬たてまつれ』」

【訳】一人の天人がかぐや姫に言うには「壺にあるお薬を召し上がれ」。
【出典】竹取物語 かぐや姫の昇天
137.
〜だに

せめて…だけでも。

【語呂合わせ】ダニを…、せめてダニだけでも駆除して。

「昇らむをだに見送り給(たま)へ」

【訳】せめて昇天していこうとするのだけでもお見送りください。
【出典】竹取物語 かぐや姫の昇天
138.
たのむ

@あてにする。
A期待させる。

【語呂合わせ】頼むぜっ!あてにしている…って期待してたのにぃ!!

@「のちの矢をたのみて、初めの矢になほざりの心あり」

【訳】あとの矢をあてにして、最初の矢(を射ること)にいいかげんな気持ちが生ずる。
【出典】徒然草 九二


A「待つ人は障りありて、たのめぬ人は来きたり」

【訳】待っている人には差し障りがあり、来ることを期待させない人はやってくる。
【出典】徒然草 一八九
139.
たまはる

いただく。

【語呂合わせ】たまご割って中身をいただく

「禄(ろく)ども、しなじなにたまはり給(たま)ふ」

【訳】褒美などをそれぞれにいただきなさる。
【出典】源氏物語 桐壺
140.
たまふ

@お与えになる。(動詞)
A〜てくださる。 お〜になる。(補助動詞)

【語呂合わせ】タマうれしくてお与えになる

@「『稲荷(いなり)よりたまふしるしの杉よ』とて、投げいでられしを」

【訳】「稲荷から下さるしるしの杉だ」といって一枝の杉を投げ出され(た夢を見)たが。
【出典】更級日記 夫の死


A「『この戸開けたまへ』とたたきけれど」

【訳】男は「この戸を開けてください」とたたいたが。
【出典】伊勢物語 二四
141.
ためし

例。手本。

【語呂合わせ】ためし手本を見せてくれ。

「よどみに浮かぶうたかたは、かつ消えかつ結びて、久しくとどまりたるためしなし」

【訳】(川の)流れが滞っている所に浮かんでいる水の泡は、一方では消え、同時に一方ではできて、そのまま(川の面に)長くとどまっている例はない。
【出典】方丈記
142.
たり

@〜た。(完了)
A〜ている。(存続)

【語呂合わせ】タリーズコーヒーでコーヒーを飲んでいる。まったり

@「無期(むご)の後に、『えい』といらへたりければ」

【訳】時間が長くたってから、「はい」と返事したので。
【出典】宇治拾遺 一・一二


A「おもしろく咲きたる桜を長く折りて、大きなる瓶(かめ)にさしたるこそ、をかしけれ」

【訳】美しく咲いている桜を長く折って、大きな花瓶(かびん)に挿してあるのは、趣深い。
【出典】枕草子 三月三日は
143.
ちぎり

約束。縁。

【語呂合わせ】ちちギリギリ約束守って、母ぶっちぎれなかっ

「あだなるちぎりをかこち、長き夜を独り明かし」

【訳】むだになってしまった約束を嘆き、長い夜を独りで明かして。
【出典】徒然草 一三七
144.
ちご

幼児。

【語呂合わせ】ちっこ幼児

「二つ三つばかりなるちごの、急ぎてはひ来る道に」

【訳】二、三歳ぐらいの幼児が、急いではってくる途中で。
【出典】枕草子 うつくしきもの
145.

〜た。(完了)

【語呂合わせ】!足

「秋田、なよ竹のかぐや姫とつけ

【訳】秋田は、(かぐや姫に)なよ竹のかぐや姫と(いう名前を)付け
【出典】竹取物語 かぐや姫の生ひ立ち
146.
つか(う)まつる

お仕え申し上げる。

【語呂合わせ】つかまった!神にお仕え申し上げる

「堀河の左大臣殿は、御社(みやしろ)までつかまつらせ給(たま)ひて」

【訳】堀河の左大臣殿は、神社まで(中宮様にお供として)お仕え申し上げなさって。
【出典】大鏡 道長下
147.
つきづきし

ふさわしい。

【語呂合わせ】つぎつぎ!私にふさわしい洋服を月々払いで。

「いと寒きに、火など急ぎおこして、炭もて渡るも、いとつきづきし

【訳】たいそう寒いときに、炭火などを急いでおこして、炭を持って行くのも、(冬の朝に)たいそうふさわしい
【出典】枕草子 春はあけぼの
148.
つごもり

月末。

【語呂合わせ】三つ子、森月末に行った。

つごもりの夜、いたう暗きに、松どもともして」

【訳】(十二)月の最後の日の夜、とても暗いときに、松明(たいまつ)を手に手にともして。
【出典】徒然草 一九
149.
つつむ

@遠慮する。
A隠す。

【語呂合わせ】つつみ隠し遠慮する

@「このふるさとの女の前にてだに、つつみ侍(はべ)るものを」

【訳】自分の実家の侍女たちの前でさえ(漢籍を読むのを)遠慮しておりますのに。
【出典】紫式部日記 消息文


A「いみじうつつみ給(たま)へど」

【訳】たいそう包み隠しておいでになるが。
【出典】源氏物語 若紫
150.
つとめて

早朝。

【語呂合わせ】パン屋に勤めたら早朝からお仕事。

「冬はつとめて

【訳】冬は早朝(が趣深い)。
【出典】枕草子 春はあけぼの
151.
つゆ

(後に打消が来て)少しも。全然。

【語呂合わせ】梅雨少しも晴れない全然晴れない」!!

「やがて末まではあらねども、すべてつゆたがふことなかりけり

【訳】すぐに下の句まで答えるということはないが、すべてにおいて少しも間違うことがなかった
【出典】枕草子 清涼殿の丑寅のすみの
152.
つれづれ

退屈だ。

【語呂合わせ】連れ、ずれたことばかり言うので退屈だ

「僧たち、宵のつれづれに

【訳】(比叡(ひえい)山)の坊さんたちは、宵の退屈(な時)に
【出典】宇治拾遺 一・一二
153.
つれなし

@平気だ。
A変わらない。

【語呂合わせ】魚が釣れなし。でも平気だ!いつもと変わらない

@「いとつれなく、なにとも思ひたらぬさまにて、たゆめ過ぐすも、またをかし」

【訳】まったく平気なふうで、なんとも思っていないようすで、(相手を)油断させとおすのも、また興味深い。
【出典】枕草子 うれしきもの


A「雪の山つれなくて年も返りぬ」

【訳】雪の山は変わらずに年も改まってしまった。
【出典】枕草子 職の御曹司におはしますころ、西の廂にて
154.
て(手)

@手。指。
A手下。軍勢。
B文字。筆跡
C手段。やり方
D手傷。(色々な意味があるので注意。)

【語呂合わせ】文字部下が隠す。

@「を折りてうちかぞへなどして」

【訳】を折って、数えたりなどして。
【出典】枕草子 すさまじきもの


A「宇治のを攻め落といて」

【訳】(義経(よしつね)は)宇治の軍勢を攻め落として。
【出典】平家物語 九・河原合戦


B「よく書き、歌よく詠みて」

【訳】文字をうまく書き、歌も上手に詠んで。
【出典】枕草子 うらやましげなるもの


C「いづれのか、とく負けぬべきと案じて」

【訳】どのやり方が、早く負けてしまうだろうかと考えて。
【出典】徒然草 一一〇


D「わが身、負ひ、からき命を生きつつ」

【訳】自分の体は傷を負って、危ない命を保ちながら。
【出典】平家物語 四・源氏揃
155.
〜で

〜ないで。

【語呂合わせ】っ!ないで。出川はないで

「さては、扇のにはあら、くらげのななり」

【訳】それでは、扇の(骨)ではなくて、くらげの(骨)であるようだ。
【出典】枕草子 中納言まゐり給ひて
156.
とかく

@とにかく。
Aあれやこれやと。

【語呂合わせ】ウサギに角と書くとにかく書く!あれやこれやと言うなっ!

@「『とかく、あるじの心まかせに』と申されければ」

【訳】「とにかく、ご主人のお心のままに」と申し上げられたので。
【出典】諸国ばなし 浮世・西鶴


A「日しきりにとかくしつつ、ののしるうちに夜ふけぬ」

【訳】一日中、あれやこれやとしながら大騒ぎするうちに、夜が更けてしまった。
【出典】土佐日記 一二・二一
157.
とく

急いで。

【語呂合わせ】売品だよ。タイムセールだからとく急いで

「船とく漕こげ」

【訳】船を急いで漕げ。
【出典】土佐日記 二・五
158.
とし

早い。

【語呂合わせ】としをとるのは早いのう…。

「春やとき花や遅きと聞き分かむ鶯(うぐひす)だにも鳴かずもあるかな」

【訳】春が来るのが早いのか、花の咲くのが遅いのかとその声を聞いて判断しようと思うそのうぐいすさえも鳴かないでいることよ。
【出典】古今集 春上
159.
としごろ

長年。

【語呂合わせ】としごろだった美少女も、長年たつとおばさんに…。

としごろよくくらべつる人々なむ、別れがたく思ひて」

【訳】長年、よくつき合って親しくしてきた人々は、別れにくいことだと思って。
【出典】土佐日記 一二・二一
160.
〜とて

@〜と言って。
A〜と思って。

【語呂合わせ】取っ手とってと言って親父ギャグじゃんと思って、「ほっといてと思って…。

@「『子となり給(たま)ふべき人なめり』とて、手にうち入れて家へ持ちて来きぬ」

【訳】「(あなたは私の)子供とおなりになるはずの方であるようだ」と言って、手のひらにひょいと入れて家へ持ってきた。
【出典】竹取物語 かぐや姫の生ひ立ち


A「男もすなる日記(にき)といふものを、女もしてみむとてするなり」

【訳】男も書くという日記というものを、女(である私)も書いてみようと思って書くのである。
【出典】土佐日記 一二・二一


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